【report|第5講座】ニッチな事業が地域で生き残る戦略

  • 2022.11.21
  • ローカルシフトアカデミー

2022年9月6日に実施した第5回目の講座は、飯尾醸造 5代目当主の飯尾さんを講師に迎え「ニッチな事業が地域で生き残る戦略」についてお話しいただきました。

飯尾氏は、京都府宮津市に生まれ、東京コカ・コーラボトリングを経て、家業である富士酢醸造元(株)飯尾醸造を承継されました。現在まで蔵人と共に農薬不使用の米作りから始める伝統的な酢造りを守っています。

その他、フードロス軽減のために「ピクル酢」を開発し、ピクルスブームをつくるなど、社会性と経済性の両立を意識した経営を実践。江戸前シャリ研究所所長、海の京都DMO食の総合プロデューサーなどを兼務するなど、「酢」を軸にその活動は多岐にわたっています。

今回は、そんな「お酢」を中心にどのように事業展開していったのか、地域との関わりなどについてお話しいただきました。

受講生の声
・言語化することに目的を置きすぎず、カッコつけすぎない方が相手にもよく伝わることがわかった。
・動きながら考え、考えながら動くことの大切さを再認識した。
・高付加価値と他付加価値の掛け合わせ、弱者としての戦略など経験からくるお話がとても印象的だった。
・自分だけが得するのではなくて、生態系として全体で面白くなっていく感覚は刺激になった。

 

<第5回講座概要>
日 時:2022年9月6日(火)19:30~21:30
形 式:オンライン
テーマ:ニッチな事業が地域で生き残る戦略
講師:飯尾 彰浩(株式会社飯尾醸造 5代目当主)

 

経営理念は「モテるお酢屋」。カッコつけすぎない人間らしさを大切に

早速、講座に入って行くのですが、タイトルは「さかなクンに学ぶ弱者のための競わない競争戦略」。お酢ではなく、まさかのさかなクンの話題からスタート。

冒頭から、飯尾氏のユーモアな人柄を感じ、和やかな雰囲気で講座が始まりました。




飯尾氏は、さかなクンを引用し、飯尾氏の事業との共通点をこう話します。

「さかなクンは魚への愛がとても強いですよね。さかなクンの強みを見ると、そこには、『知識・味覚・画力』という3つの実践力がある。ひとつずつの要素で見ると、さかなクンよりもすごいプロフェッショナルは存在するが、その3つを掛け合わせることで、唯一無二の存在になることができる。飯尾醸造もそれと同じことが言えます」

飯尾醸造の経営理念は、「モテるお酢屋」。そして、飯尾醸造を一言で表すと「お酢界のHERMES」だと言います。

 

そこにはいくつかのキーワードがありました。

・わかりやすい言葉で言語化

・3つの要素を掛け合わせて唯一無二の存在に

・必要としてくれる人を大切に

・高付加価値×他付加価で満足度UP

弱者ならではの経営をデザイン

 

多くの人は自分でモテるとは言いません。僕の理念は、全員からモテたいわけではなくて、必要とされる人からモーレツにモテたい。そのためには、『商品・体験・ビジョン』の3つの要素が重要です。一番大事なキーコンテンツである『商品』を補完するために、『体験』と『ビジョン』が掛け算されると、共感を呼び愛される、唯一無二のものになります」

飯尾氏が最も大事にしていることは、スタッフやユーザー、生産者や地元などに必要とされること。そのために周りの人やものを大事にすることでした。

そのことが「モテる」という誰もがイメージしやすい言葉で言語化され、さらに3つの要素を掛け合わせて、飯尾醸造というブランドが確立されているのだと感じました。

さらに、弱者ならではの経営をデザインすることだと飯尾氏は話します。

「現在、僕の事業は、お酢づくりの他、まちづくりや日本酒、食文化など多岐にわたっています。一つずつ見ると全く違うことをしているようですが、『お酢』という商品を中心に、全て繋がっています。大事なのは自分が弱者だということを認識すること。ど真ん中を狙うのではなく、オセロのように“端”を取る。新しいカテゴリーを作れば、競争はなくなりますよね。だからこそ、ならではの経営をデザインすることが大事です」

現在に至るまでには、飯尾氏自身もいろいろな失敗をしながらたどり着いたと言います。

飯尾氏自身が持ち合わせる楽しむことを忘れないマインドに加え、大切な人やものと実直に向き合ってこられたことが、今の飯尾醸造を作り上げているのだと感じます。

何か壮大なことをすることだけが成功につながるのではなく、一つひとつ地道に真摯に向き合うことの大切さに改めて気付かされました。


そして、後半は、受講生によるビジネスプランの中間発表を実施。今回の発表者は5名。

最終発表に向け準備を進めているビジネスプランについて、飯尾さんから直接アドバイスをいただきました!発表した受講生もそうでない受講生も色々とヒントになったのではないでしょうか。

私たち事務局も受講生のプランを具体的に聴くのは初めてだったので、とてもワクワク楽しい時間でした。

最終発表は、2か月後の11月6日。残すところあと2回の講座となりました。

今日の学びも含め、受講生のプランもこれからまたさらに磨きがかかっていくことでしょう。