【report|第6講座】地域資源を磨き上げリブランディングする

  • 2022.11.21
  • ローカルシフトアカデミー

第6講座は、株式会社バーズ・プランニング 代表取締役の松尾聡子氏を講師に迎え、「地域資源を磨き上げリブランディングする」をテーマにお話いただきました。

佐賀県唐津市出身の松尾氏。デザインの仕事をする一方で、地域の活力となる商品を作りたいと、唐津市加唐島の椿油を使ったオリジナルブランドをプロデュースされています。「地域×デザイン」の視点から、地域にある資源をより一層高めていくリブランディングについて学びました。

 

受講生の声
・ビジネスの取り組み方の原点である信念とパワーを感じた。
・さまざまなアイディアが浮かんできてプラン作りに生かしていきたいと思った。
・まずは飛び込んでやってみるという精神を持ちたい。
・自分もワクワクしながら、周りを巻き込んでいくことが大切だと感じた。

 

<第6回講座概要>
日 時:2022年9月27日(火)19:30~21:30
形 式:オンライン
テーマ:地域資源を磨き上げリブランディングする
講 師:松尾 聡子氏(株式会社バーズ・プランニング 代表取締役)

 

地域をまるごとデザイン。もう虚しいだなんて言わせない。

福岡のデザイン会社で経験を積んだ後、地元に戻り、2010年に今のデザイン会社を立ち上げたという松尾氏。子どもの頃は、地元が嫌いだったと言います。しかし、大人になって地元に戻ると、衰退した町を盛り上げようといろんなことをやっている人たちとの出会いから、自分にも何かできないかと真剣に考えるようになったとのこと。

呼子を盛り上げるために、イカをモチーフにしたイカタオルやTシャツなどを作るなど、デザイナーの仕事や商品開発をしながら、もっと地域と違う関わりがしたいと思っていた松尾氏。

そんな矢先、加唐島の椿油の存在に出会い、そこから松尾氏の活動がどんどん動き始めます。

 

・仕事がないなら作ればいい。

・地域に関わるときは根っこから関わる。

・誰かのためにすることが結果として自分に返ってくる。

・人をいかに巻き込んでいくか。

 

加唐島は、呼子から船で20分ほどの場所にある佐賀県最北端の島です。そんな島でずっと大切に育てられていた椿油。

松尾氏によると、加唐島の人口は約90人(令和3年10月時点)。高齢化も進み、後継者不足などの問題を抱える中、自生している椿を手摘みで収穫し、成分の良さを崩さない製法で作られた椿油は、松尾氏にとって魅力でしかなかったと言います。しかし、島の人たちはそれを全く魅力だと気づいていなかったとのこと。

「それを知った時、なぜこんなに良いものを外に出さないのかと思いました。島の人たちに話を聞く中で、“自分達の椿油が何に使われているかわからないから虚しい”という言葉を聞いた時、“絶対にそんなこと言わせない” と自分に強く誓ったんです。この島の魅力は、椿油にきちんと付加価値をつけることで、島全体が潤うというシステム。この椿油で地域おこしをやると覚悟を決め、“地域まるごとデザイン”プロジェクトとして動いていきました」

 

心が折れても淡々と突き抜ける

ここから松尾氏は、島の人たちの信頼を得るため1年かけて島に入り込みます。しかし、高齢化が進み、後継者不足の問題を抱えた島の人たちからは、商品化に反対の声も上がったと言います。

「高齢者が多い島なので、体力のきつさなどもあり、新しいことに抵抗がある住民の声もありました。でも、地域に関わる時は根っこからだと私は思っているので、まずはどんなに素晴らしい椿油を作っているのかを伝えることから入っていきました。島の人がどんなことに困っているのかを聴きながら、地域活動や奉仕活動に参加したり、自身でも地域を巻き込んでイベントを開催したり1年くらいかけていろんなことをやってきましたね」

次第に、島の人との関係も築かれていき、ようやく「やってみようか」と島の人たちとも合意。そして1年後に、1つ目の商品となる「TSUBAKI SAVON」が完成しました。商品は全て松尾氏がデザインしたもの。「何に使われているかわからないから虚しい」という声に応えるべく、完成した商品は敬老会で島民全員に配っているとのこと。作り手と使い手が見えるのが松尾氏の商品の魅力の一つでもあります。

さらに、今では5つの商品を展開し、全国から本物の椿油を求め加唐島に訪れる人が増えたようです。

そこに至るまでには、きっと色々な不安や葛藤があったに違いありません。受講生からも、松尾氏の原動力はどこから来るのでしょうかという質問も上がりました。

「島に行くのが怖い日もありましたし、経済的にもぎりぎりになることもありました。当然、傷つくこともあるし、心がぐちゃぐちゃになることもある。でもだからこそ、前に進んでいくためには、情熱や覚悟を持ちながらも淡々と今を生きることが大切。今では、後ろ向きだった島の人たちも誇りを取り戻しました。これぞ私が思い描いていた地域デザインだなと感じています。

これは、島の人たちと作り上げた大きな希望です。これからは、椿を軸に循環するサイクルを作りながら、日本一の椿油にすることが私たちの目標です」

講座中、終始明るくご自身の経験をざっくばらんにお話しいただいた松尾氏。そんな飾らない人間味溢れる松尾氏に親近感を覚えた受講生も大勢いたことでしょう。

やりたいと思ったらすぐやる。ご自身のことをせっかちだと言われていましたが、本能で動くからこそ、一緒にやってみたいと思わせる。それが周りの人を巻き込んでいく松尾氏の魅力につながっているのだなと感じました。

そして後半は、前回同様、受講生のビジネスプランに講評いただき、プランのブラッシュアップの時間。ここでも人と人を繋ぎ、巻き込む松尾氏のアイデアが光る、ワクワクするような時間となりました。

今回の講座では、zoom背景も事務局と同じ背景にしていただきとても光栄でした!

貴重なお話を本当にありがとうございました。

さて、次回の第7講座がいよいよ最終講座となります。

受講生のプランが最終発表に向けどのように進化していくのかとても楽しみです。