【report|第7講座】地域をデザインの力で価値を上げる

  • 2022.11.21
  • ローカルシフトアカデミー

2022年10月11日、最終発表を残し、本アカデミー最後の講座となる第7講座を実施しました。講師は、能登町にデザイン会社を構える、株式会社SCARAMANGA 代表取締役の辻野実氏。現在は、能登町の祭や風土を映像・写真で紹介する「NOTONOWILD 」プロジェクトを立ち上げ、能登町定住促進協議会のホームページやブログなどにも携わっておられます。

最近では、能登町宇出津に「DOYA COOFFEE」というコーヒースタンドをオープン。地域の人たちのコミュニケーションの場となっています。

そんな辻野氏に講義いただいた最終講座のテーマは、「地域をデザインの力で価値を上げる」。

能登町でのご自身の活動や実践をお話いただきながら、今回は最終講座ということで、能登町で実践する辻野氏に受講生が自分のビジネスプランをぶつける時間を多く取りました。



受講生の声
・事業を立ち上げる際の想いや培ってこられたプロセスを知ることができた。
・能登町で既に取り組みを行なっている生の意見が参考になった
・クオリティを担保しつつ地域で活動するリアルな視点が得られた。
・自分をコンテンツ化するためには、自分の軸やスキルを身につけることが必要だと感じた。

 

<第7回講座概要>
日 時:2022年10月11日(火)19:30~21:30
形 式:オンライン
テーマ:地域をデザインの力で価値を上げる
講師:辻野 実氏(株式会社SCARAMANGA 代表取締役)

 

自分も地域もどうデザインするかは自分次第

高校生まで能登町で育ったという辻野氏。卒業後は、大阪の大学へ進学しマーケテイング会社へ就職。2007年の能登半島沖地震を機に石川県に戻り、金沢市の企業に勤めた後、ウェブデザイナーとして独立します。

そんな辻野氏の代表的な活動の一つに、「NOTONOWILD」プロジェクトがあります。殴り書きされたような荒々しいロゴは、ほっこりとした能登町のイメージとは裏腹に、力強くカッコいい、もう一つの能登町の側面を感じさせてくれます。

このプロジェクトは、能登町の過疎化問題にアプローチするため2016年にスタートさせ、自身の活動の下地にもなっていると言います。

「“NOTONOWILD”プロジェクトは、過疎化問題に対し、デザインとHIPHOPの力で祭をカッコよく発信することで、故郷への誇りを取り戻そうと2016年に始めたメディア。それ以前は、能登町はただ田舎というイメージが強かったが、今ではこのメデイアが多くの人に認知され、“能登町=カッコいい”というイメージに変わってきたのではないかと感じています。そして結果的に、この取り組みが新たな仕事に繋がり、自分自身の下地ができたと言える一つの要素になっています」

それから、2018年に能登町で唯一となる現在のデザイン会社を立ち上げ、2022年7月には能登町に「DOYA COOFFEE」をオープンさせます。

デザインをキーワードにさまざまな活動を展開する辻野氏ですが、その上で大切にしているポイントについて伺いました。

 

・事業の強度を上げる。

・需要に応えるのではなく、つくって求められる場所へ。

・自分をコンテンツ化する。

 

「スタートアップするなら、土台をしっかりつくること。事業は、“確度”ではなく、“強度”が大事なんです。僕の場合だと、ウェブデザインだけではなく、写真や動画、コピーライティングのスキルを上げ、いろんな武器を用意しました。いくつかのスキルを持っておくことはとても強みになる。特に地方だと1本のスキルだけで事業を成り立たせていくのは難しいので、3本柱くらいで基盤を作ってスタートすることが大事だと思います」

どうしても打率を上げたい、確率を上げたいと先走ってしまいがちですが、土台の強度をしっかり固めておくことが、後に結果としてついてくるのだということを学びました。

さらに、能登町宇出津で、町の人たちのコミュニケーションの場となっている「DOYA COOFFEE」についても、立ち上げの経緯などをお話いただきました。

この場所には、フィールドワークでも伺わせていただきましたが、スタッフとの他愛もない会話や偶然居合わせた客同士での会話が楽しく、町や人との距離感をグッと近づけてくれる空間です。

「DOYA(どーや)」というのは、能登町の人が親しい間柄の人たちで挨拶するときによく使われる言葉とのこと。何気ない一言や会話からコミュニケーションやコミュニティが生まれる場所になっていることを、私たちも肌で感じることができました。

「この場所を作った理由は、町の喫茶店が新型コロナウイルスの影響で閉店してしまったことと、能登町に移住後おいしいコーヒーを飲めるところがなかったからなんです。正直、町の人からは求められていなかったかもしれませんが、需要があるところで何かをするのは僕じゃなくてもできる。ここを立ち上げるとき、需要に応えるよりも、つくってから求められる場所にしようと思ったんです。ここでは、コーヒーではなく“出会う人”が商品。ここで出会う人やそこから新しく広がっていくことなど、自分をコンテンツ化することで求められることってこれから必要なんじゃないかなと感じます」

自分のコンテンツ化とは、自分の知識や経験、強みなどをビジュアル化すること。都会と違い、発信の仕方や魅せ方によって、唯一の存在となれるのは地域ならではの特徴でもあります。

自分で自分の価値を高めるのと同じように、地域の価値を上げるためには、求められることに応えるのではなく、自分が地域に必要だと思ったものを、求められるためにどうデザインするのかという視点がとても重要なのだと辻野氏のお話から感じました。

後半は、前回、前々回にプレゼン発表をしていない受講生による発表の時間を多く設けました。辻野氏には9名の受講生のビジネスプランやいま考えていることに丁寧に応えていただきました。

会社員、フリーランス、起業というステップを踏んできた辻野氏だからこそ、そして能登町で実際に実践されている辻野氏の言葉は、受講生たちにとっても胸に刺さる言葉がたくさんあったのではないかと思います。

この日の2時間の講座もあっという間に終わってしまいましたが、いよいよ次回が最終講座。この4ヶ月間の集大成となる最終発表が迫っています。

1人ひとり進むスピードは違っても、申込んだときと今とではそれぞれ感じる変化や気づきがあったことと思います。日々進化する受講生たちの最終発表が今からとても楽しみです。

今回の講師である辻野氏を始め、今まで関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。

今年の最終発表は、11月6日(日)能登町で実施されます。

本アカデミーの公式Facebookにてご視聴いただけますので、ぜひご覧ください。

 

▼能登ローカルシフトアカデミーFacebookページ▼

https://www.facebook.com/noto.local.shift.academy